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だめだ・・・・完全にノックアウトだ。 それからは飲んで食べて・・・気がついたらユーサクに自転車の後ろに乗せてもらっていた。 なんか知らないけどユーサクが 「ありえねーんだよっ」と叫んだから俺も思わず 「そーだっありえないっつーの」と大声を出した。 あんなに若くてきれいな子が何が良くて俺を好きだなんていうのか・・・ありえないっ・・・・ 自宅に戻るとユーサクの容赦ない一言がぐさりと胸に突き刺さる。 「45歳はこれ以上ないくらいおっさんだろうが?」 だけど彼女はオレを好きだという・・・「だよな…おっさんだよな・・・おっさんなんだよ・・・」 そうさ、俺も彼女が好きだ・・・「おっさんなのにな〜」ついついにやけてくる・・・ いつの間にかユーサクはいなかった。 自分の部屋に行ったんだろう・・・熱いシャワーを浴びていると口から「栞のテーマ」が口をつく。 明日も頑張るぞ〜とやけに気合がはいる。恋とはいくつになってもこんなに楽しいものなんだなとつくづく思った。 さすがに朝は少し何時もより遅く起きたが、昨日早めに切り上げた分、今日は仕事に行く。 朝はコーヒーを飲んでナミレスに寄らずに行った。 事務所に行くと森口が毛布にくるまって眠っていた。 彼の机の上にはスケッチがある。 徹夜して書いていたんだろう。 のぞこうかと思ったら 「ん・・・・お母さん・・・・?」 寝ぼけている。 起こすとかわいそうなので自分の部屋に行き、仕事を始めた。 仕事をしながらも彼女のことが頭から離れない。 好きになればなるほどいつか彼女が離れていくかも・・・と思うとブレーキがかかる。 いつの間に頭で考えながら恋愛するようになったんだろうなぁ・・・と苦笑いが出る。 彼女につられて百パーセントの気持ちでのめりこむと、失った時に回復できない恐れが自分の中にあって、自分の気持ちに正直になれない。 我ながらツマンナイ男だよまったく・・・ 若い時は失うつらさよりも手に入れる満足感しか考えてなかったのに。 若さは永遠なんかじゃないんだよな〜。 好きな人に好きと言える・・・・それがこんなに難しいなんて思ってもみなかったな。 「コンコン」 「はい」 「所長ちょっといいっすか?」 「ああ、森口君、昨日徹夜だったのか?」 「はい・・・・昨日・・・現場見に行ってきて・・・・」 「あぁ御苦労さん、どうだった?」 「僕やっぱ出来ないっす」 「は?なんで?」 「あの公園予定地・・・あの今ある汚い公園・・・・つぶせないっす」 「つぶせない?」 「あそこに大きな木があるんすけど」 「ああ、あるな…古い大きな木が」 「あの根元に僕捨てられてたんすよ」 「え?」 「あれ?僕言ってなかったっすか?赤ん坊の頃にあの場所に捨てられてたんですよ」 「・・・いや・・・・君・・それは聞いてない・・・君・・・そんな苦労してたんだ」 「あ〜でも育ててくれた両親が超いい人で、僕何の苦労もせずにおっきくしてもらいましたから感謝してます」 「そうなのか・・・・」 「僕へんな話なんですが・・・捨てられたときのこと覚えてて・・・なんかすげー雨降ってて、女の人が僕をあの木の下に置いてったんすよ・・・僕超ブルーになったんすけど、木の葉っぱが風に揺られて歌を歌ってくれたんですよ…子守歌っていうんですか? そういうの・・・サラサラ〜という葉っぱの音と一緒に聞こえてきて、それでいい気分になって眠って起きたらもう温かいベッドで寝かされてたんすけどね」 「不思議な話だな」 「でしょ?だけど僕はあの木に超感謝してるんです、だって泣いて体力なくなったら僕死んでいたかも知れなかったんですよ・・しかも2月の雨の日ですからね・・・だからあの木は僕の命の恩人なんです」 「あぁ・・気持ちはわかるよ」 「でも公園にするにはあの木は伐らなくちゃいけないじゃないですか?」 「・・・・・・・」 「僕には出来ないです」 「・・・・君の想いを入れてもう一度考えてみたらいい」 「でも・・・」 「森口君・・・君の才能はそんなもんじゃないだろ・・・あの木を大切に思うならそれを何らかの形で残せるか考えてみたらいい・・万が一木の老朽化がひどくて、たとえ今の姿で残せないにしてもいろんな手があるはずだ」 「今の姿でなくても・・・・・・はいっ・・・そうっすねっ・・・ちょっと考えてみます」 ・・・・彼にそんな過去があったなんて・・・考えてもみなかった。 自ら公園マニアと言うだけあって日本だけではなく、世界中の公園を見るために放浪していたのは聞いていた。 彼はもしかすると公園で何かを見つけようとしているのかも知れないな・・・ 彼が気になり事務所に行くと今井女史も出勤していた。 「君今日休日じゃなかったのか?」 「あ・・・ええ・・・」 元気がない・・もしかして今の話を聞いていたのか? 「所長・・・ちょっと・・」 部屋の隅に俺を呼び、声をひそめて言う。 「あの・・・私さっきの話・・すみません…聞いてしまって・・」 「あぁ、そうなのか・・・俺も初めて聞いたんだけどな」 「昨日森口君と現場に行ったんですよ」 「そうなのか?」 「で、急にあの大きな木に向かって走っていって・・・しばらく目を瞑ったかと思ったら、今度は急にダーッっと走りだして帰っちゃったんです」 「そうなのか・・・・・」 「それで・・・私の祖母があの公園のすぐ近くに住んでいまして」 「当時のことは覚えて・・・」 「はい、当時は結構大きなニュースで、祖母もはっきり覚えていました」 「そうなのか・・・」 「あの公園は遊具も少なくて、なんて言うか…カップルが・・何か夜にデートするみたいな・・そんな公園で、日中は人気もすくなくて・・どうやら、朝方に置いていって、見つかったのは昼過ぎだったらしいです」 「かわいそうにな・・・二月の雨の日だったって言うし・・・」 「いえ、それが、うちの祖母がいうには二月だけど小春日和でぽかぽかした日だったらしいんですよ」 「・・・そうなのか・・・まぁ、彼のは赤ん坊の時の記憶だからな」 「・・・・所長…あの子大丈夫ですかね?」 「…森口は・・・あの木に感謝をしていると言っていた・・・そして彼の頭の中はそれをどんな形で表すかでいっぱいだ・・・俺はあいつこそがこの公園を生き返らせるのに最もふさわしいと思う」 「・・・精神的に追い詰められないでしょうかね」 「…彼なら出来るよ・・もちろん、君のフォローがあってこそだと思うがね」 「・・・そうですか・・・わかりました・・・」 「せんぱ〜い」 向こうから図面から顔も上げず森口が呼んでいる。 「はいはい」 なんだか彼女も嬉しそうに答える 「では行ってきますっ」小さく敬礼して 「あんたなんかまた変なこと考えてないでしょうね〜」と小走りで向かっていった。 「何言ってんすかせんぱ〜い・・・オレ超マッスルハッスルでやりますから」 「はいはい」 なんだかんだ言いながらあの二人は相性がいいのだ。 二人のやり取りを聞いていたらなんだか彼女の声が聞きたくなった。 部屋に戻り電話をする。 「どうしたんですか?」 「あ・・・・いや・・・なんか・・別に用はないんだけど」 「私は声が聞きたいなと思っていましたけど」 「ははは」 「私が昨日言った言葉が本当の気持ちですからね」 「え_?」 「好きになれば年は関係ないですっていったことです」 「ああ」 「所長はどうなんですか?」 「俺?」 「年齢は関係ありますか?」 そうだよな・・関係ないんだよ…お互いが好きかどうかが大切なんだよな・・・全く・・失うことばかり考えて踏み出せないなんて、なんてつまらない男なんだ俺は・・・何度でも挑戦すればいいだけじゃないのか?そのくらいでくじけてどうする? 「浅海君」 「はい?」 「俺は、初めて君に会った時から君に惹かれていた・・・君が・・・・好きだ」 「・・・・・・・」 彼女の反応がない・・・・とたんに、こんなこと言った自分が恥ずかしくて仕方がない・・・鬼のような後悔が襲う・・・ 「もしもし?」 俺の問いかけに 「はい・・・」と泣き声の彼女が答える。 「・・・・私も・・大好きです・・・」 それから打ち合わせと雑務におわれ結局12時前にやっと家に着いた。 リビングに行くとユーサクがテレビ通販のしわ取りクリームの説明を聞きながらクッション抱えてニヤついている・・・何なんだいったい? 真っ赤な顔をして熱でもあるのかと思い声をかけたらクッション抱えたままソファから転がり落ちた。 「ああ・・テレビが面白くてつい・・」とユーサクがいう。 しわ取りクリームの説明のどこがそんなに楽しいのか俺にはさっぱりわからない・・・なにか違う使い方をするのが若者の間で流行ってるとでもいうのか? 「こんなもの何に使うんだ?」と聞くとあわてて 「いや、この前にやっていたのが・・」と口ごもるから 「あんまり変なもの買うなよ」と言っておいた。 シャワーでも浴びようかと行きかけた時に急にユーサクが話しかけてきた。 「今日さ・・・あれ見てきたんだ・・・あの…坂の上の美術館」 心の底から驚いた。 俺の作ったものは絶対に見ない、一生見ないと言っていたのに・・・どういう心境の変化があったのか・・・ その上「あの建物・・良いなと思うよ・・・あったけーよな」とかなんとか言ってきた。 信じられない。 「おとーさんが死ねばよかったのに」・・・・あの強烈な言葉は今でも俺の胸にとげのように突き刺さっていいた。 本当にそうならどれだけいいか・・・俺自身も何度も思った。 でも現実は死んだのはあいつで残ったのは俺たちだった。 自分を顧みずに仕事に出て行く親父に、あいつは俺にまで見捨てられたんだと思い込んだのだろうな。 それがあの涙の意味だと思う・・・だけど・・・俺は何も言えなかった・・・一緒に泣けば良かったのか? あの時に子供の前で涙を見せてしまうと、自分が二度と立ち上がれないような・・そんな気がして・・・抱きしめることも出来なかった・・・こみあげてくる涙をこらえてたった一言「ごめんな」としか言えなかった。 あの時のユーサクの瞳に浮かんだのは、怒りでなくて間違いなく失望だったと思う。 それからあいつは俺の仕事の話をしてくれとねだることはしなくなった。 あいつは俺の仕事を・・仕事をする俺を憎んでいると思っていた。 なのにいったい何があったのか? 「まっそれだけだし・・風呂入って寝るわっ」 「ああ・・」 「・・・・・・・・ユーサク」 「ん?」 「ありがとうな」 「ん・・・・・おやすみ」 「おやすみ」 あれから・・いろんな賞をもらってきた・・・中には身に余るような賞ももらった。 いろんなメディアに取り上げてもらい、たくさんの人から称賛の声も頂いた。 だけど…ユーサクからのあの一言・・・あれがこんなにも心に染みいるほどうれしく思うなんて・・・・ あの美術館は、俺がもう一度自分の足で立ち上がるためにどうしてもやらなければいけない仕事だった。 来た人が心安らぎ、温かな気持ちになってくれるような建物をどうしても作りたかった。 母親の温かさ、父親の安心感、そして無償の愛に包まれた子供の安らぎ・・・そういったものを全部表したかった。 死によって崩れた俺達が再生するために絶対に作りたかったものだった。 だから、彼女が「自分の家に帰ってきたような気持ちになって」と言ってくれたときは嬉しかった。 そして、今日ユーサクが 「あったけーよな」と言ってくれたことも・・・・・ 何年も前に建てたあの建物が、今こうやって俺に幸せを運んでくれている・・・本当に不思議だ。 「あったけーよな」かぁ・・・いつの間にか大人になったんだなぁ・・・一緒にレンガを探せるのもそう遠くないかもしれないなぁ・・・ なんて感慨深くソファに座り、ユーサクがさっきまで持っていたクッションを何気に顔の近くまで持っていったら 「くさっ」・・・ニンニクくさい・・・ あいつ・・・焼肉食いやがったな・・・明日村田さんが狂ったようにファブリーズするのが目に浮かぶ・・すみません。 充実した気持ちでベッドに入ったら・・・少しだけ、胸に刺すような痛みがあった。 最近ちょくちょくこんな痛みがある。 過労がたまっているのかも知れないな。 明日は少しゆっくりして・・・そして・・・彼女に電話をして・・・ユーサクにもきちんと話そう・・・ 明日、そうしよう・・・・ |
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| 内 容 | ニックネーム/日時 |
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当然ながら夕べはBOHBONo.5渦巻くなか眠りにつきました。そうなんだ〜森口がこう来るとはぁ〜 |
ドモホルン-アラGO 2008/10/20 08:35 |
ここまできたということは…もう次くらいで終わりですね。管理人さんは以前にユーサクの友達編もあると言っておられましたよね? |
こうすけ 2008/10/21 09:20 |
ドモホルンリンクル様 |
あほあほ管理者 2008/10/21 11:17 |
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